取材・文:日本フードリンクメディア編集部
2026年10月1日、朝6時。日本フードリンクの工場に、荷台付きの黒いピックアップが入ってきました。運転してきたのは、株式会社農業未来総研の佐藤社長。当社の給食から出る食品残渣の回収と肥料づくりを担っていただいているパートナーで、ご自身も田畑を耕す農家です。
佐藤社長は、残渣の袋を次々と荷台へ積み込んでいきます。

回収は2か所から行われます。一つは、調理の過程で出たキャベツの外葉や玉ねぎの皮などの野菜くずを詰めた袋。もう一つは、給食の食べ残しを入れる、容量90リットルほどの大きなポリバケツです。この日の前日の給食は麺で、ポリバケツの食べ残しは1杯ほどでした。ところが佐藤社長によると、ご飯の日の翌日には、これが6杯ほどにもなるといいます。給食の残りの量は、献立によって大きく変わる。麺やパンの日は少なく、ご飯の日は多いのです。
日本フードリンクは、給食の残りを「ごみ」とは呼ばず、次の食を育てる「資源」と考えてきました。では、給食の残りは、実際にどのようにして「資源」になっていくのでしょうか。
給食のあと、残ったものはどこへ行くのか
毎日、多くの人に届けられる給食。その調理の過程では野菜の切れ端などの「調理残さ」が生まれ、食事のあとには「食べ残し」が出ます。一般には、こうしたものは「ごみ」として処分されがちです。
日本フードリンクでは、給食残渣を肥料にする堆肥型生ごみ処理機を自社に保有し、2012年から、関連会社である農業法人・株式会社アグリライフの畑の肥料としてリサイクルする循環型農業を続けてきました。
そして2025年8月、新潟市の中学校で全員給食が始まりました。セントラルキッチンで製造する食数は2200食から3700食となり、約2倍になりました。給食を食べる生徒が増えれば、残渣も増えます。そこで私たちはネットワークを広げ、残渣の肥料化を拡大しました。佐藤社長との連携も、その広がりの一つです。
「つくる→食べる→捨てる」で終わらせず、「つくる→食べる→土へ還す→育てる→また食べる」へ。一本の線だった食の流れを、地域の中で輪にしていく発想です。
工場を出た残渣は、新潟市西蒲区にある堆肥づくりの現場「旗屋ベース」へと運ばれます。
「すぐ効く」ではなく、「土を育てる」肥料
回収された残渣は、黒々とした堆肥の山の上に、運ばれてきたばかりのキャベツの外葉や玉ねぎの皮が広げられ、もみ殻などと混ぜ合わせながら、時間をかけて有機肥料・堆肥へと変わっていきます。もみ殻をいぶした「燻炭(くんたん)」づくり、食品の炭化物を組み合わせた肥料や、木質チップと混ぜた資材の製造にも取り組まれていました。雪の降る冬のあいだも、製造は止まらないそうです。

「この肥料には、どんな効果があるんですか」と尋ねると、返ってきたのはとても誠実な答えでした。化学肥料のように、すぐに目に見えて収量が増えるものではない。続けて土に入れることで微生物が育ち、土がふかふかの粒の構造(団粒構造)になって、水はけと水もちがよくなり、作物が養分を吸いやすくなる。いわば「土を元気にして、作物が負けにくい状態をつくる資材」なのだそうです。
この肥料をまいたアグリライフのネギ畑。給食の残りが、こうして土の中で次の作物を支えている。その光景は、どんな数字よりも多くを語っています。

「減らす」と「循環させる」
循環の輪をつなぐことと同じくらい大切なのが、輪の入口である「残り」そのものを減らすことです。農林水産省によると、2023年度の日本の食品ロス発生量は464万トンと推計されています。まず、食べられるものをできるだけ無駄にしない。そのうえで、どうしても出てしまうものは資源として地域へ還していく。「減らす」と「循環させる」は、どちらも欠かせない両輪です。
ご飯の日は、残りが多い
堆肥づくりの現場で見たのが、給食の残りが土へと還っていく「出口」だとすれば、冒頭の2026年10月1日の朝、自社工場で見たのは、その「入口」でした。そしてそこで知ったのが、残りが多くなるのは「ご飯の日」だということです。
そして翌日、佐藤社長から一枚の写真が届きました。ご飯の日の翌朝、回収に向かう佐藤代表の車の荷台です。わざわざ撮って送ってくださったその写真には、白いご飯がぎっしり詰まった袋が、荷台を埋めるように積まれていました。前日に見た、ポリバケツ1杯ほどの食べ残しとの差は一目瞭然でした。

佐藤社長は、米づくりの手間と苦労を身をもって知る農家でもあります。
「手間をかけて育てたお米が、食べられずにこうして戻ってくる。生産者としては、やっぱり悲しいですね」
折しも今、アグリライフの田んぼでは新米の収穫が進んでいます。この新米は、これから学校給食へ納める予定のお米です。一方で、同じ給食のご飯が、残されて工場から運び出されていく。黄金色の田んぼと、袋いっぱいの白いご飯。同じ季節に並んだこの二つの光景は、給食に携わる私たちに、重い問いを投げかけています。

これは、子どもたちを責めたい話ではありません。量は適切か、献立や味付けはどうか、食べる時間は足りているか。一食を届ける給食会社として、私たち自身が考えるべきことがたくさんある。現場は、そのことを静かに教えてくれました。
一食の向こう側へ
私たちが毎日当たり前にしている「食べる」という行為。その一食の向こう側には、田んぼがあり、調理場があり、回収の現場があり、土があります。昨日の給食から生まれたものが土に還り、畑を育て、いつかまた誰かの一食になる。
日本フードリンクは、新潟で給食に携わる企業として、食を通じて健康をつくることはもちろん、その先にある地域の持続可能性にも向き合っていきます。
「もったいないから捨てない」だけではなく、「次の食につなげるために活かす」。それが、私たちが給食の残りを「ごみ」と呼ばない理由です。

食の循環を、もっと詳しく
日本フードリンクでは、給食事業を起点に、食品残渣の再資源化や農業との連携など、地域の未来につながる取り組みを進めています。フードリンクプロジェクトでは、こうした「食」をめぐる活動や、その背景にある考え方をこれからも発信していきます。

